日本の不動産会社の多くは、激しい競合市場、長期的な営業、業界の複雑さといった現実から、消費者向けビジネスでありながらBtoB企業のような形態をとっています。こうした背景から、多くの不動産会社は、BtoB向けのマーケティングオートメーション・アドテクノロジー・マーテックを活用することで、集客・顧客管理・販売促進などを自動化し、売上アップに役立てています。
例えば、不動産業者がマーケティングオートメーションを利用することで、日々の重要なマルチタスクを自動化。見込み客の対応に時間を割けるようになります。さらに、見込み客の育成もマーケティングオートメーションシステムに任せられます。
不動産のマーケティング担当者は、マーケティングオートメーションを使うことで、見込み客の住宅購入時期や興味・関心に合わせて個別にカスタマイズされたコンテンツを自動配信できるようになります。また、どのマーケティング施策が「売上」「コンバージョン」に貢献しているかを判断するマーケティングアトリビューションシステムを構築することで、どのようなキャンペーンが最も高いROIを生み出すかを特定できます。
そして最後にマーケティングオートメーションでは、見込み客が自分の意志で企業に興味を持ち、気になる情報のみを受け取れます。しつこい営業や定型的なメルマガは必要ありません。担当者との打ち合わせもワンクリックで予約できます。
不動産業界におけるMarketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot )の活用事例
今回は、Marketing Cloud Account Engagement(Pardot)の専門家とセールスフォースパートナーとして、Pardotを活用して成功している住宅会社の事例をもとに、不動産業界に役立つPardotの活用事例を8つご紹介します。
ナーチャリングキャンペーンで、セールスエンゲージメントの自動化を実現
活用事例
ある住宅フランチャイズの地方支社では、Pardotを導入して営業チームを強化し、時間のかかる見込み客の育成を効率的に行いたいと考えていました。マーケティングチームが毎週新しいブログ記事を更新する中で、多くの顧客情報を持っていたため、見込み客に対して6カ月の間、週に1回のペースでメールを自動配信することで、営業担当者がお客様との時間に集中できるようにしたいと考えました。
解決策
- 3つのスコア基準をつくり、独自のリードスコアリングモデルを設定。高得点(100点以上)、標準(50点以上)、低得点(50点未満)。
- 3つのメールによる顧客育成プログラムを設定。各スコアリングの基準に適したブログ記事を活用します。各メールは、営業担当者から送信されたように表示していますが、実際には自動で6カ月間、毎週配信されるように設計されています。
- 見込み客のスコアが上がると自動的に送信メールがしきい値の低いキャンペーンからしきい値の高いキャンペーンへと切り替わります。
- 見込み客がメールをクリックしたり、返信したりといった行動を起こすと、営業担当者に通知が届き、フォローアップが可能になります。
モデルハウスの見学会やイベントでの見込み客獲得を自動化
活用事例
ある住宅会社には、3棟のモデルハウスがあり、新規客の獲得に欠かせない場所でした。このモデルハウスでは、来場者に2ページのアンケート用紙を配布し、それを手入力でデータ化。その後、営業をする方法で、来場者の名簿を獲得していました。そこで、マーケティングチームは、この作業をマーケティングオートメーションで効率化したいと考えていました。
解決策
- Pardotのランディングページにキオスクモードのフォームを作成し、ウェブサイトの外観を再現しながらも、マーケティングチームが簡単にカスタマイズして今後のイベントに利用できるようにした。
- モデルハウスでの見学会でランディングページのフォームとiPadを使って、素早く見込み客の情報を取得し、事務作業の手間を軽減する。
- 見込み客が情報を入力すると、営業担当者が自動的に割り振られ、メールナーチャリングプログラムやメルマガに登録された。
予約カレンダーの自動調整と作成
活用事例
ある不動産会社では、予約を取るために日付と時間の記入欄があるWordpressのフォームを利用していました。予約フォームに入力された案件は、管理者がスケジュールの空いている担当者へ転送して、フォローアップの調整を依頼していました。この作業はどちらにとっても時間がかかるものでしたので、作業を自動化する必要がありました。また、お客様へのフォローアップが見えにくく、対応の遅延によってお客様の関心を失ってしまうという問題も生じていました。
解決策
- WebサイトのフォームをPardotと日程調整ツールCalendlyを埋め込んだものに統合。担当者のカレンダーとリアルタイムで接続し、予定が空いている時間に担当者との打ち合わせを予約できるようにしました。
- 予約が完了すると、営業担当者と見込み客のカレンダーにイベントが作成。Salesforce上で見込み客として更新され、営業担当者に割り当てられ、リマインダー、フォロー、ナーチャリングのキャンペーンに登録されました。
- CalendlyはSalesforceと連携しているため、見込み客の集客方法を把握するためのレポート作成も可能です。例えば、ある見込み客がGoogle広告をクリックし、その後打ち合わせを予約した場合、その見込み客はGoogle広告経由であるとSalesforceのレポート上で確認できます。
スコアリングカテゴリーによるハイレベルな個別化
活用事例
ある小さな建築事務所は、ヨーロッパとアメリカンスタイルの住宅設計を専門としています。この会社は、非常にニッチな趣味を持つ見込み客を対象にしていました。住宅に求める好みや「夢のマイホーム」の特徴を細かく把握し、マーケティングを通じて、よりパーソナライズされた顧客満足度の高い体験を提供することを望んでいました。
解決策
- 「夢のマイホーム」の特徴を細かく把握し、それらを「スコアリングカテゴリー」に分類して、カスタム数字項目で見込み客をスコアリングしていきます。例えば、見込み顧客がアメリカンスタイルのレンガ仕上げの家の事例を見た場合、その見込み客は「アメリカンスタイル」のスコアリングカテゴリーに+1ポイント、「レンガ建築」のスコアリングカテゴリーに+1ポイントを追加します。
- あるスコアリングカテゴリーが短期間に5ポイントを多く獲得した場合、そのカテゴリーへの関心が高いことを表します。そのため、見込み客はそれらのテーマを中心に構築されたドリップメールプログラムに登録されます。例えば、アメリカの住宅に興味がある見込み客は、最近建てられたアメリカの家の事例を紹介するメールを受け取れます。
- カスタムアラートで、見込み客が高いエンゲージメントを示したときに、そのスコアとエンゲージメントが高かったスコアリングカテゴリーを営業担当者に通知するために使用されました。これらの結果はSalesforceのレポートにまとめられ、マーケティングチームが将来的に作成するコンテンツのテーマを把握するのに役立ちました。
見込み顧客が重要な行動を取った場合に営業にアラートを送信
活用事例
ある小さな住宅会社の事例です。多くのリードが少数の営業担当者に分散していたため、最も関心のある見込み客を、担当営業に最優先でつなげたいと考えていました。
解決策
見込み客を分類するために、カスタム項目、ページアクション、自動化ルールを作成。これらのアクションが発生した時点で、営業担当者にメールでアラートを送りました。例えば、以下のような場合、営業担当者にアラートが送られます。
- 1カ月間ウェブサイトを訪問していなかった見込み客が、突然ホームページを閲覧した場合
- 過去7日間に10件以上の事例やブログページを訪問した見込み客の場合
- スコアが50以上に達した見込み客の場合
- とても熱心な見込み客が現在ウェブサイトを閲覧している場合
- 以前に失注した見込み客が久しぶりにウェブサイトを訪問した場合
このようなアクションが起こった場合、営業担当者は直ちに見込み客に接触し、優先的に対応ができます。
OB(リピート客)と非OB(新規)の顧客に対して、セグメンテーション、ダイナミックコンテンツ、レスポンシブデザインを実装
活用事例
ある中部地方の不動産会社は、既存客からの口コミによる新規顧客開拓に頼っていました。同時に、事例を活用して見込み客を育成し、OB顧客(既存客)に対しては常にキャンペーンや特典を付けることで、関心を持ってもらいたいと考えていました。
解決策
- SalesforceとPardotでOB顧客と非OB顧客をダイナミックリストで分け、10分ごとに自動更新されるようにしました。
- スマートフォンやタブレット端末に合わせたレスポンシブなメール作成により、マーケティングチームがコーディングなしで簡単にニュースレターを作成できるようにしました。
- ニュースレターの内容に、顧客ごとに表示するコンテンツを動的に切り替えるダイナミックコンテンツを利用しました。マーケターは、1通のメールを送信するだけで、見込み客のデータに基づいてコンテンツを変更できました。
カスタムアトリビューションモデルで高いROIを実現するマーケティングキャンペーンの特定
活用事例
ある中規模の不動産業のお客様は、Google、Yahoo 、Facebook、Instagramで多くの検索広告やバナー広告を配信していました。Google アナリティクスで訪問者とコンバージョンのデータを把握していたものの、有料マーケティングキャンペーンによって生み出された収益とROIを理解する方法が必要でした。
解決策
- PardotのGoogleアナリティクス コネクタを使用し、カスタムアトリビューションモデルを作成しました。フォームにある非表示項目も活用することでGoogleアナリティクスに流入経路を正しく認識させるためのUTMパラメータデータを取得しました。
- カスタム項目、キャンペーン、エンゲージメントスタジオ、Salesforceダッシュボードを活用。四半期ごとに、どのオンラインおよびオフライン活動が最も多くの収益を生み出したかをマーケティングチームが簡単に理解できるよう、ファーストタッチのマーケティングアトリビューションデータを取得・出力できるようにしました。
Pardotビジネスユニットを使って地域ごとに独自のマーケティング戦略を実施
活用事例
ある大手企業は、多くの子会社を抱えており、それぞれが独立した住宅設計・施工会社になっていました。各会社は専門分野に特化しながらも、同じ地域で事業を展開しているため、互いに競合していました。
同じ見込み客が複数の子会社に登録することが多く、その場合、各子会社は独自のアプローチでマーケティングや営業をする必要がありました。そのため、各子会社はそれぞれのマーケティングオートメーションツールが必要でしたが、データはすべて一つのSalesforce CRMに一元化したいという希望もありました。
解決策
- Pardot Advancedエディションとビジネスユニットを導入し、各子会社にビジネスユニットを設定することで独自のPardotインスタンスをカスタマイズできるようにしました。これにより、すべてのデータが一つのSalesforceインスタンスに統合されました。
例えば、鈴木太郎さんがブランドAのウェブサイトとブランドBのウェブサイトの両方でフォームに記入した場合、2つの見込み客が作成されます。
- ブランドAのPardotに鈴木太郎さんの情報を作成。ブランドAのPardot内で作成されたメルマガやナーチャリングプログラムが利用可能になります。Salesforceでは、鈴木太郎さんはブランドAの営業担当者に割り当てられ、営業担当者にはブランドAに関連する鈴木さんの情報のみが表示されます。
- 鈴木太郎さんはブランドBのPardotでも全く別の見込み客として作成。そのブランドのメルマガやナーチャリングプログラムにも登録されます。Salesforceでは、重複したリードとして作成され、ブランドBの営業チームの誰かに割り当てられます。
- 営業チームには、1つの見込み客の情報しか表示されませんが、管理者はすべての見込み客を確認できます。管理者は、全子会社のブランド情報を把握した上で、見込み客の動向やビジネスの機会をレポート作成できます。
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SuperdriveはSalesforceのオフィシャルパートナーであり、Salesforce認定Marketing Cloudスペシャリスト・コンサルタントが在籍しています。