脳のバイアスを利用してオーディエンスと関わる5つの方法:パート1

Wウェイターが伝票と一緒にちょっとしたお礼のしるしにとミントキャンディを手渡してくれたら、思わず彼にチップをあげたくなりませんか?あなたの脳には、何かをしてもらったら返さなければならない、何かをしてあげたら返してもらえると考えるレシプロシティ(互恵性)に偏向する回路が備わっています。このような脳の癖を、科学者は認知バイアスと呼んでいます。私たちの脳は、0と1の組み合わせパターンを読み取り、指示通り正確に実行するコンピュータのような設計にはなっていません。そのかわり、エネルギーを温存し、かつ処理速度を早めるために「近道」をとるよう進化してきました。この心の近道は、私たちに知覚のゆがみや不正確な判断、非論理的な結論付けをさせることにもつながります。実はそれこそが、ヒトがヒトである所以であると言えるでしょう。

広告主は脳のこのような「近道」をうまく利用して人々に働きかけ、あるブランドを他よりも好きだと思わせたり、無意識のうちに行動を変えさせたりします。

ソーシャルインフルエンスやコミュニケーションの専門家による共著「“Hidden Persuasion: 33 Psycological Influence Techniques in Advertising”(心理的影響を利用した33の広告テクニック)」という新刊書では、オーディエンスの無意識の領域に及ぼす影響について関心を持つ人々のために、この近道が検証・分類されています。

オーディンエンスの心理はどのように働くのでしょうか。また、それをどのようにマーケティングオートメーションと対象コンテンツというコンテクストの中で応用することできるでしょうか。これからの課題を念頭におきながら、行動に影響を及ぼすいくつかの方法をご紹介します。

1. フット・イン・ザ・ドアはじめに小さなリクエストをすると、より大きなリクエストに応じてもらえる道が開かれます。これを、未知のリード(まだ存在を知らない見込み客)を既知のリード(可能性のある見込み客)に変えることを目的としたデータ収集の世界に当てはめると、最初は軽いエンゲージメントから始めて、後からより深いコミットメントを確立していくことを意味します。この原則をゲートありコンテンツ(gated content)にうまく適用してプログレッシブプロファイリングを促進すると、記入フォームから信頼に基づいたデータリレーションシップを構築するのに役立ちます。

2. オルタキャスティング人がある社会的役割を受け入れると、その役割にふさわしい期待どおりの行動をとるようになります。あなたがDos Equisのビールを飲むことがあれば、広告を思い出して、世界一面白い男を目指さなければ(あるいは、そう努力しなければ)と少しばかり考えるでしょう。この例えは、コンテンツパスウェイに重要な示唆を与え、オーディエンスが親近感を覚え、同じような経験をしたいと思わせる機会を作るのに役立つでしょう。コンテンツは必ずしもオーディエンスに合わせたものである必要はなく、オーディエンス自身の考えを変えさせるようなコンテンツを提供することもできるのだということを覚えておいてください。

自動化された劣悪なコンテンツは、昔ながらの広告よりもはるかに顧客を遠ざける結果になりやすいということを心に留めておいてください 

3. スカーシティ・ヒューリスティック(経験則による希少性の原理)手に入れることが難しければ、人はそれをもっと欲しがります。手に入る可能性が少ないと感じることで何かに価値を見いだすのは、人の心がとる近道です。この心理的な近道は、ブランドからの提供品やお買い得品を数や販売時間を制限して提供するときに利用できます。また、セールスのコンテクストにおいてだけでなく、オーディエンスに希少な物を与える代わりに、オーディエンスからデータを提供してもらうというやり方にも応用することができます。

4. デコイ(おとり効果)買い手が2つの似た製品のあいだで選択に迷っているときに、あらたにデコイ(おとり)を紹介すると、売り手が望むよい結果に仕向けやすくなります。コーヒーやソフトウェアの例で考えると、小さなオプションと大きなオプションのあいだに相当なギャップがあるとき、そのまん中に中間的なオプションをおくと、より多くのお金をかけてでも大きいオプションを選んだ方が正しい選択だと考えるようになります。これにはあらゆる科学の力が作用しています。(http://interaction-dynamics/blog/tag/decoy-pricing.)

5. アンカリング製品の価値は比較されるものに大きく影響をうけます。私たちは、前に見たことのあるものと比較して何かの価値を評価する傾向があります。これは自動車産業でよく利用されるバイアスです。彼らは、その後の価格交渉を“アンカー”できるようにオープニングプライスを設定します。つまり、たとえ最終的な合意価格が値引きされたようにみえても、実は自分たちが当初から想定していた価格とそれほど大きく違わないところに納まるように価格設定をするのです。ここでも、購買後に売り手と買い手の言い分が食い違う、将来の顧客を失う、ブランドの評判にダメージを与えるというような事態にならないよう、現実に即したアンカーを下すことが非常に重要です。

あなたのリードとの直接の会話をもたらすマーケティングオートメーションでは、これらの戦略を取り入れることを意識し、その戦略をインテリジェントに適用することが重要です。次に提案をまとめるときには、この心理的なバイアスに留意した上でA/Bテストを行ってください。

Sam Cassels & Sosuke Koyama

画像はJason Freeny氏のご厚意による